デザインルール


http://www.rieti.go.jp/it/column_index.html

「モジュール化パワー」は、20世紀後半に現れ、指数関数的に世界経済に浸透している新たな産業アーキテクチャの推進力(Force)である。90年代にその威力に気付いた諸国は、ハイテクの最先端で生じる技術オプションに対応してイノベーションのスピードを急速に高め、国際競争力を磨いていった。その間、日本は、80年代の製造業での成功体験にひきずられ、「モジュール化」という地殻変動の推進力を見落とし、対応も大幅に遅れた。その結果、自動車など極度にインテグラル型産業を除いて、国際競争で地歩を失っていった。

「モジュール化」は、イノベーションの推進主体を、大企業中枢から、モジュールごとの非集権的で局所的な小集団に移す。このため、テクノロジー・ロードマップの最先端を体得しているスピンオフ・ベンチャー大学発ベンチャーが主役となり得る。


現実の経済実態に目を転じると、産業分野ごとにモジュール化の浸透速度は異なってはいるが、ディジタル情報通信技術の進展によって、モジュール化可能な領域は急速に深化・拡大してきている。・・・モジュール化は、単に設計方法の変更にとどまらず、独立した連続的「進化」を促すことで、新たな価値を陸続と創造する。シリコンバレーを中核とするベンチャー企業群のクラスターは、その写像に過ぎないのである。


企業統治(ガバナンス)は、モジュール化が進み、非集権的で局所的な小集団からなる水平分業体制のもとでは、もはや企業単体の問題ではなくなってきている。自律したモジュールからなるシステム全体がどう効果的にガバナンスされるか(もしくは個々が自律性を保つか)が、産業や業界全体の活性化やイノベーションの発生などに大きくかかわると考えられる。