易が教える「開運十徳」の実践で人生を悠々と生きる

小田(2016)は、易の思想とは、どんな運気の流れにおいても悠々と生きていく智慧を教えてくれるものであると説き、「易のメッセージを静かに受け取れば、自分の人生航路に納得したり、新たな船出をすることができるようになるだろう」としたうえで、易が教える「開運十徳」の実践を奨励する。


まず、運命に対する考え方について見てみよう。運命の開拓という視点で見たとき、自らの人生をどのように創造していきたいかという積極的な意志と同時に、避けえない人生の不孝や不条理に対し、どのようにそれを受け止め立ち向かっていくのかという2つの心こそが、運命に対する積極的な態度であり、運命に翻弄されない揺るぎない心をつくると小田はいう。立命とは、絶対避けえない「宿命」に対し「自分の命を立てていく根源的な座標軸」の追求であり、これこそが運命に対する正しい向き合い方だというわけである。


では、上記のような人生の実践に役立つ易とはどのようなものか。小田によれば、易は「変化の書」であり、大きく3つの意味(三義)が含まれているとする。1つ目が「すべては変化する」という考え方、2つ目が「本質は変わらざるものである(普遍)」という考え方、3つ目が「無限の創造」という考え方である。易は、あらゆる現象を包みつつ、この「変化」と「普遍」、そして「無限の創造」を大基軸として天地の現象、人間世界の運行を把握展開していく思想なのである。


小田が解説する易の開運十徳の1つ目は、陽転思考の徳である。易によればすべての物事が「永遠に流転」していくので、どんなに困窮したとしても、その中に「陽の力」が潜在していると説く。であるから「人生に起こるあらゆる出来事をあるがままに受け止め、感動と感謝の心を持って明るく生きる」ことが大切だと説くのである。2つ目は、多聞多見の徳である。「智慧ある人の言葉をよく聞け」という意味である。「聞く力」が人生の扉を開くのである。3つ目は、志の徳である。思いがあれば道は開くということである。


開運十徳の4つ目は、知足の徳である。「陽極まれば陰に転ずる」ことから、特に調子が良いときは「足るを知る」を意識し、調子に乗りすぎないことを説く。5つ目は、謙虚の徳である。成功した時こそ、慢心せず、気を引き締めて事に当たることの重要性を説く。6つ目は、幸運の徳である。「運がいい」と確信して生きる人は良い人生を送ることができるということである。うまくいっているときは自分以外のものに感謝し、うまくいかないときはそのことを「ありがたい」と感じ、大難が小難で済んだと喜び、これはもっと素晴らしいことが起こる前触れであると感じる。


開運十徳の7つ目は、歓喜の徳である。人生の一つひとつの出来事に感情を動かし、喜びの心で味わう。ときには辛いと感じることでもしっかりと味わうことで、そこに人生の妙味が見えてくると説く。8つ目は、三省の徳である。反省することで、自分自身の妄念を打ち破り、正しい道に進んでいくことができる。9つ目は、有縁の徳である。一つひとつの出来事や出会いに自分なりの縁を感じて生きていくと、それが運命の大河となって私たちを豊かな人生へと導いていくのだという。10つ目は、倫理の徳である。心を透明ぬすることは人生に大きな福をもたらすと説くのである。