論文を書くときに留意すべき「差別化」

学術論文を書くときに留意すべきポイントとして「差別化」がある。つまり、ほかの研究や論文との「違い」は何かということである。学術論文に限らず、就職活動にしても、企業の製品戦略にしても、「差別化」はもっとも基本である。読者や顧客にとって、「ほかと何が異なるのか」がわからなければ、それが持つユニークな価値がわからないからである。あるものがユニークな価値を持つためには、第1に、他とは違うことすなわち「差別化」であり、第2に、その差別化されたものの「中身」である。


学術論文については、査読においてしばしば指摘されるのが、「この論文の学術上のオリジナルな貢献は何なのか」「過去の先行文献をどういった形で乗り越えたのか」という、学術上の貢献である。学術的に貢献するためには、多くの場合、先人の研究成果に何らかの付加価値をつけるということである。そしてそれは、これまでとは異なる理論、発見、見解でもって、付加価値をつけるのである。よって、「差別化」は大前提であり、そのうえで、差別化の中身が問われるということである。もっともインパクトのある論文というのは、例えば、これまで地球が平らであるといわれてきた分野において、「地球が丸い」ということを証拠をもって示すことである。明らかに主張しているポイントが異なるし、それ自体が、地球に関する人々の認識のあり方に大きなインパクトをあたえるものである。


このように、通説を覆すような研究成果は並みの研究者がそう簡単に実現できるものではない。よって、論文を書く際に、まず目指すべき現実的な目標は、既存の研究成果を少しでも前に発展させることであろう。そのさいに、論文の書き方として、「差別化」と「差別化の中身」を、できるだけ論文の冒頭に近い部分で、しっかりと示すようにするのが大切なのである。