ストーリーで感情に訴える

ストーリーは、一言でいえば、出来事を時間の流れに沿って綴る形式で表させるものである。川上(2008)は、人は論理よりも感情で動くことから、仕事にストーリーを活用する有効性を説いている。なぜなら、ストーリーこそ、人々の感動に訴えることができ、感情を動かすことができるからである。人類は太古から神話や伝説などストーリーが好きな動物である。その理由は、人間の頭は、ストーリーを記憶するのが得意なようにできていることがある。童話や昔話など、一度聞いたら忘れないものが多い。つまり、ストーリーは記憶に残りやすい。それから、ストーリーは、直接論理的な話よりも教訓として心に響きやすい。さらに、ストーリーは立場によって多面的に解釈できるので、直接言うと反発されそうな注意や説教などを含ませるのに適している。よって、魅力的なストーリーを語れば、人々はそれに興味がわくし、感情移入をしたり感情を動かされたりするし、記憶に残りやすいのである。


川上によれば、ストーリーには、万人の感動のツボを刺激する黄金パターンがある。またこれかと思ってもついつい感動してしまう。それは「何かが欠落している、あるいは欠落された主人公(そのような主人公にこそ感情移入が起こる)」「主人公がなんとしてもやり遂げようとする遠く険しい目標(目標に立ち向かう主人公は魅力的に映る)」「乗り越えなければならない数多くの葛藤、障害、敵(障害が多いほどワクワクドキドキする、燃える)」である。これらが含まれているストーリーは万人受けする。そして、川上のいうTDL方式でストーリーを構成するのがよい。TDLとは「つかむ」「揺らす」「満足させる」である。