論文投稿の長い旅3

投稿論文の査読結果が、修正後再投稿(Revise and Resubmit or R&R)であると、2名の匿名査読者のコメントと、編集委員のコメントに記されている修正が必要な箇所、問題点をクリアしていく必要がある。そうして再投稿すると、今度はもう1人、オリジナルの原稿を読んでいない査読者が加わって、3名で論文を審査することになっていた。


すぐに論文の修正に取り掛かることはしない。まず大切なのは、帰ってきたコメントを何度も読み返して、査読者や編集委員の意図を十分に理解することである。基本的に、査読のフィードバックは、内容をほめるコメントは入っていない。それは、単に紙面がもったいないからという理由であり、どこがいけないのかという問題点ばかりが列挙してある。そういう理由だから、自分たちの論文がクオリティの低いものであると落胆する必要はない。最初のほうは、ネガティブな表現の多いコメントが非常に敵対的にすら感じてくる場合がある。しかし、何度も読み返したり、しばらく時間を空けると、実は非常に建設的で親切なフィードバックであることがだんだんとわかってくる。つまり、単に問題点をけなしているのではなく、どうすれば論文が良くなるのかというヒントがかならずコメントの中に含まれているということなのだ。すなわち、冷たい言葉による暖かいコーチングなのである。


編集委員は、2名の査読者のコメントから、どう修正すればよくなるのかと丁寧にまとめて示してくれており、これが大変役立つものであった。これをアンカーにして、査読者のコメントを一項目づつ、丁寧に読み込み、元の原稿を見比べて、どう対応すればよいのかの構想を練っていく。だいたい、3名のコメントには共通する部分があるので、いくつかの修正の方向性を示すブロックが頭の中で整理されてくる。そのブロックごとに、どう修正していこうかという構想と具体策を練っていく。原稿にはいっさい手をつけず、修正箇所の下書きを別のファイルで作成していく。だいたい、すぐに直せるブロックから、改善するにはかなり時間のかかりそうなブロックまであるので、まずはすぐに対応できるブロックからスタートし、具体的な修正箇所を下書きして作成する。かなり難しい部分は、再び、関連する文献を入手して読み込んだりしながら、じっくりと取り組む。分析方法で改善が必要な場合には、もう一度データを分析しなおす。


かなり手ごわいところも大体の目処が立ってきたところで、修正原稿全体のアウトプットイメージがクリアになってくるので、ここで初めて原稿に手をつける。下書きを原稿にコピー&ペーストしながら原稿を修正していく。最後の全体を何度も読み返し、査読コメントとをいったりきたりしながら、査読で指摘された修正必要点が、リクエストどおりに改善しているかどうかを念入りにチェックする。査読者は、初回投稿の査読にかなりの時間を割いてコメントを作るので、再投稿された原稿に対しては、たいてい、初回に査読してコメントした部分に適切に対応しているかどうかに注意し、論文全体をまたゼロから読み込むことは(時間の関係上)あまりしないと思われる。したがって、指摘されたポイントの改善に全力を尽くすわけである。


これで、再投稿用の修正原稿はほぼ完成した。しかし、これで終わりではない。さらに大変な作業が待っている。それは、修正点を整理した手紙を作成することである。これをいい加減に作成することはできないのである。