駅の雑踏のメタファー

都市部のラッシュアワーなどで、電車が停車すると、降りてきた客がホームや階段にどっと押し寄せる。階段の幅一杯になってどっと下りてくる人の流れに、一人勇敢に立ち向かって登ろうとしても、昇りきるのにはそうとうの困難が伴う。これは、まさに流れに逆らおうとするとどんなことが起こるかを表している。


では、駅のホームや階段のような雑踏では、人々の流れに沿ってあることとが常によいのか。そうとは限らない。人の流れは、その人々がある方向に向かっているということである。考え事をしていたりして、ぼぅっと人の流れに着いていけば、自分が行きたかった方向とは違う方向にいってしまうことになる。例えば、高田馬場駅で山手線を降り、考え事をしながらただ他の人の流れについていって階段を昇り、渡り廊下を歩くと、その先にはJR乗換え口しかなく、出口がないということがある。これは、流れに流されてしまったことを示している。


自分が行き着く先、目的地点を明確に意識した上で、なおかつ、そこにつくために不必要な労力をかけないために、人々の流れにうまく乗って進むということが、駅の雑踏のような日常場面でも求められているのである。