http://www.accenture.com/Countries/Japan/Research_and_Insights/By_Subject/Human_Performance/chan_thought_freeagent.htm

フリーエージェントとは
フリーエージェントとは、ダニエル・ピンクが著した『フリーエージェント社会の到来』(ダイヤモンド社)によると、組織に属さずに働く人々(フリーランス、臨時社員、ミニ起業家)の総称。アメリカで3,300万人に達すると推計されている。

会社と個人の新しい関係
 フリーエージェント時代に向けた「会社と個人」の関係の変化は、マネジメントにも影響を及ぼすことになる。では、フリーエージェント時代のマネジメントは、どのようなものになるのか。「市場原理」「プロジェクト」「自己責任」の三つのキーワードで大胆に描いてみよう(図1参照)。

図1 フリーエージェント時代のマネジメント

1. 市場原理
 フリーエージェント時代のマネジメントの最も重要な要素は、「市場原理」である。フリーエージェント時代では、社内で擬似的に労働市場が形成され、仕事を発注する側と受注する側との市場原理に基づく取引が行われるようになる。すなわち、人材が市場原理でシフトするということである。
 結果として、面白い仕事や多大な報酬を期待できる仕事、やりがいのある仕事といった人気のある仕事には応募する人材が殺到し、逆に成長機会の少ない仕事や報酬に比べてリスクの大きな仕事には人材が集まらなくなり、そうした仕事自体は廃止されるかアウトソーシングという形で社外のリソースを活用することになるだろう。
 一方、個人も自分がやりたいと思う仕事に就くためには、自らの市場価値をアピールし、社内労働市場における競争力を高める必要が出てくる。すなわち、市場価値の高い人材には仕事のオファーが集まり、逆に低い人材には仕事のオファーが来ないという現象が現実となる。

2. プロジェクト
 フリーエージェント時代には、プロジェクト・ベースの仕事が中心となる。したがって、組織もチームがベースになる。組織のフレキシビリティは、従来に比べて格段に高まる。オポチュニティー・ベースですぐにチームが発足し、社内からメンバーが募集される。
 その後、プロジェクトの規模が拡大すればチームの規模も大きくなり、逆に、プロジェクトが失敗したり、当初の目的を達成したりすれば、即、解散ということになる。
 また、評価や給与のシステムも、プロジェクト・ベースで再構築される。
 評価システムについては、報酬に反映する評価と、昇進に反映する評価で構成される。報酬に反映する評価は、プロジェクトでの成果や貢献度がすべてとなる。また、昇進に向けた評価は、プロジェクトでの活動を通じたコンピテンシー評価がベースになる。
 給与については、いままで以上に成果主義が徹底される。プロジェクト単位での予算管理が行われ、プロジェクトでどの程度の利益を確保したのかが可視化され、当該利益から各個人のプロジェクトに対する成果や貢献度に応じて給与が配分されるようになる。

3. 自己責任
 これまで仕事に必要な知識やスキルを習得することについては、会社が負担、すなわち投資をしていた。さらに、どの仕事をしてもらうかも会社がイニシアチブを握っていた。したがって、ビジネス上のリスクは会社が負い、事業に失敗しても一定の給与は保証してきた。
 こうした親子にも似た会社と個人の関係は一変する。すなわち、フリーエージェント時代には会社と個人の関係が対等となり、これまで会社が面倒をみてきたさまざまな事項が原則、自己責任になる。
 たとえば、人材配置。フリーエージェントである以上、どの仕事に就くかは個人の希望と市場原理(プロジェクト・リーダーの意思を含む)で決定される。今後は、個人がどのような仕事に就くかを会社がコントロールできない状況になるのである。
 したがって、個人の能力開発に対する会社のスタンスも変わる。個人が仕事に必要なスキルを習得する際は、自分で研修カリキュラムを検索し、必要に応じて受講することになる。なぜなら、特定の個人がどのようなキャリアを志向するかについて、会社は強制もできないし、責任も持てないからである。
 さらに、給与についても、プロジェクトで獲得した利益を個人に配分するという原則から、固定給の部分は低く抑えられ、序列等による格差はなくなる。

 こうした「会社と個人」の関係が大きく変化し、マネジメントのあり方もまったく違ったものとなるフリーエージェント時代においては、これまでミドル・マネジャーが行っていた仕事のやり方では通用しなくなり、新たな仕事術が求められるのである。

ダイヤモンド社 発行 「リーダーシップ・ストラテジー」 2002年秋号 p124-p131より転載