雇用機会均等

男女雇用機会均等政策研究会
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/06/h0622-1.html

ヨーロッパでは、「間接差別(indirect discrimination)」と称されていることが多いが、初めてこの概念が登場したのは、アメリカにおける1971年のGriggs事件連邦最高裁判決であり、1964年公民権法第7編(以下「第7編」という。)の解釈として、「差別的効果(disparate impact)法理」が確立した。この差別的効果法理は、裁判例の蓄積を経て、1991年には第7編に規定が追加されている。
 一方、アメリカにおいて生成、発展した差別的効果法理の概念はヨーロッパに渡り、間接差別と呼ばれるようになった。EUの均等待遇に関する76年指令や各国国内法において規定が設けられ、やはり裁判例の集積を通じて徐々に具体的なイメージが形成されてきたものである(以下、アメリカの「差別的効果法理」を含め、「間接差別」と呼ぶこととする)。

 間接差別概念の基本的考え方は各国ほぼ共通であるが、間接差別の概念を他の概念との比較で整理すれば、以下のとおりとなる。
(1)  いわゆる直接差別との関係
 我が国の法律においては男女雇用機会均等法も含め、およそ直接差別と間接差別という切り口で整理・制定されているものはない。しかし、既に法概念として定着している諸外国の法制の例から見れば、いわゆる直接差別は性に基づく取扱いの違いに着目する概念であるのに対し、間接差別は外見上は性中立的な基準等が男女に与える影響の違いに着目し、かつ差別意図の有無は問わないという相違がある。
(2)  いわゆる結果の平等との関係
 間接差別法理導入の目的は、一方の性に対して不利益を与える不必要かつ不合理な障壁を取り除き、実質的に機会の均等を確保することにある。
 間接差別は、格差の存在が前提になるものの、問題となっている基準等に職務との関連性や業務上の必要性などの合理性が認められれば差別とはならないものであり、格差の存在自体を問題とし、労働者の意欲や能力にかかわらず数値上の平等という結果自体を直接の目的とするようないわゆる結果の平等とは明らかに異なる。
(3)  ポジティブ・アクションとの関係
 ポジティブ・アクションには、女性のみを対象とする、あるいは、女性を有利に扱う取組のみならず、男女双方を対象とした取組として、女性が事実上満たしにくい採用・登用基準を見直したり、女性の勤続年数の伸長を図ることを目的として職業生活と家庭生活との両立支援施策を推進する等の取組も含まれるものであるが、後者については、女性という集団に与える不合理な障壁の是正を図るものであるという点で、間接差別法理と同様の目的を有しているという共通点がある。
 しかし、問題となっている基準等が間接差別であるとされた場合は、違法という評価を受けるものであるのに対し、ポジティブ・アクションは違法という評価を受けず、より望ましい状態に向けた雇用管理等の改善を図るというものであり、効果が異なる。また、それゆえ、ポジティブ・アクションの取組の対象は、間接差別におけるよりも広範な内容が含まれる。