外資系企業のトップは日本人か外国人か

まず、外資系企業のトップになりうる人物の出身として、本国(Parent Country Nationals: PCNs)、現地人材(Host Country Nationals: HCNs)、第3国の人材(Third Country Nationals: TCNs)のどれかである。


外資系企業のトップがPCNになるのか、HCNになるのか、あるいはTCNになるのかは、様々な要因によって決定される。もっとも古典的かつシンプルな理論として、多国籍企業経営には自民族中心主義と多元主義とがあり、前者の場合は現地拠点にPCNを送るのが一般的である。これは、多国籍企業の国際化の度合いとも関連がある。国際化が低い場合は多くの場合、PCNを現地に送る。もう少し詳しく要因別に見てみる。

多国籍企業の本国の要因

本国が違えば、PCN,HCN,TCNの割合も異なるだろう。
Power distanceの高い国とかUncertainty avoidanceの低い国は、PCNを送り込む確率が高いだろう。
本国の文化と現地の文化の距離が遠いほど、PCNを送り込む確率が高いだろう(共通理解が得にくく、本国からの監視が必要)。

業界要因

R&Dインテンシブな業界ほど、PCNを送り込む確率が高いだろう。
統合・標準化の度合いが高い業界ほど、PCNを送り込む確率が高いだろう。

現地拠点の要因

現地拠点がまだ若い場合、PCNを送り込む確率が高いだろう。
現地拠点の規模が大きいほど、リスクも高く監視が必要なので、PCNを送り込む確率が高いだろう。
買収した拠点よりも独自に進出した拠点へのほうが、PCNを送り込む確率が高いだろう。
現地拠点の戦略的重要度が高いばあいほど、PCNを送り込む確率が高いだろう。
現地拠点の業務が複雑であるほど、PCNを送り込む確率が高いだろう。

多国籍企業の要因

国際化の度合いが低いほど、PCNを送り込む確率が高いだろう。
R&Dインテンシブな企業ほど、PCNを送り込む確率が高いだろう。

日本独特の要因

現地拠点に英語のできる人材が多い企業ほど、PCNを送り込む確率が高いだろう。
英語のできる人材が多そうな大都市圏ほど、PCNを送り込む確率が高いだろう。

日本における関心

他の国と比べた場合に、日本という文脈が持つ特殊性がどう影響してくるか。まず、言葉の問題。英語を話せる人材が相対的に少ない環境でマネジメントを実践していかなければならない。コミュニケーション上の問題が生じよう。
次に、さまざまな経営施策が規制によって縛られていたりする。採用の仕組みや賃金などの労働条件や、オペレーションの条件、複雑な商慣行など、外国人だと理解しずらい要因など。
また、他の国に比べて外資系企業そのものの比率が少ないという指摘もある。外資が参入しにくい特徴を以前からもっていたと思われる。