身体感覚

私はといえば、毎日の生活の中で、目的地に何時までに行かなくてはいけない、仕事でこの人に会わなくては、などと忙しく過ごしていて、移動中の風景も空の色も、あるいは空気のにおいも、ほとんど感じないまま生きている。私自身もそうだし、私たちの社会も「いま・ここ」という瞬間を全身で感じることを軽視して、「意味のないこと」と切り捨ててきたのではないか・・・

腰や腹をある程度鍛えていますと、「自分の中心はここにある」という感覚が、ごく自然に感じられる。身体のどこにも中心が感じられないと、ふわふわした透明な感じになってしまって、それは漠然とした不安感につながっていくと思うんです。フィクションとしてでもいいから、腰や腹を自分の中心として設定し、感じようとしていると、それがいつか習慣になる。すると、「ここが踏ん張りどころだ」というときに、「本腰を入れて」「腹を据えて」という言葉を使うことで、その感覚が引き出されるようになる。こうした言葉は感覚を取り出すスイッチみたいなものですから。