メタファーの理論

おおよそ、すべての言語活動は何らかの度合いで比喩的である。だから、経営学の理論においてもメタファーの利用は重要な役割を担う。とりわけ、理論を構築する場面で、メタファーは重要な役割を果たす。これは形式的理論の検証や実証とは区別して考える必要がある。メタファーは形式的理論を構築するような場合に、ある現実を構成していくうえでの最初の発見的なプロセスに用いられるべきである。例えば、組織を「アウトプットを出すために部品が複雑かつ相互依存的に組み込まれた機械のメタファー」で捉える。いつしかそれが、メタファーそのものが意識されなくなり(その見方があたり前となり)、機械的組織観を暗黙の前提とする理論が発展する。


メタファーは、新しい視点や理論を生み出す原動力となる。メタファーを活用することによって、想像力が活性化し、試行錯誤を通じて新しい理論につながっていく。例えば、既存の言葉で表現するのが難しい現象の側面を、メタファーを用いることによって具体性を伴なうかたちで理解を深めることができる。つまり、文字通りの言語では表現できない重要な何かをメタファーを用いることによって表現することができる。

メタファーの比較理論

メタファー(ソース)と、対象(ターゲット)を比べて、両者の類似性(もしくは相違)に注目する。つまり、メタファーを用いて、対象を理解するときには、両者の類似性が主に理解を促すのに利用される。その類似性というのは、最初から明確に比較できるように対応しているわけではないことがミソである。つまり、文字通り淡々と比較するのではなく、メタファーとターゲットとの間にはある種のアンバランスがある。比較理論の弱点は、メタファーは、それ自体で、ターゲット(対象)の理解に役立つ形の属性のセットとして捉えることは困難であるということである。それは自明ではない。だから、メタファーの属性を用いて対象を理解するという図式がやや単純である。

メタファーの領域相互作用モデル

メタファーと対象は共通する属性をあらかじめ持っているというよりは、両者を平行的に眺めたうえで、共通点を「創りだす」と考える。つまり、メタファーと対象は相互作用をする関係にあると捉える。両者をブレンドして考えることによって、メタファーを用いて対象を理解することを深めるような「意味」が創出されると考える。メタファーを用いて対象を理解しようとする試みは実際はより創造的なプロセスである。
まず、メタファーおよび対象のコンセプトがもつ大まかな意味的領域がある(それの大まかな特徴を示すもの)。それが関連付けて捉えられる。いったん意味領域での類似性が特定されたら、さらに下位次元における状況特定的な特徴の連関がなされる。

  1. メタファーを用いて対象を理解するときには、まずそれぞれの概念領域がやや抽象的なかたちで把握される(機械=部品がシステマチックに組み合わさった全体というように)。
  2. メタファーと対象の概念をブレンドし、両者を連関させるために対応する特徴を思いつき、洗練化する。
  3. ブレンドの過程で新しい意味が創出され、対象にフィードバックされ理解につながる。
文献

BEYOND COMPARE: METAPHOR IN ORGANIZATION THEORY. By: Cornelissen, Joep P.. Academy of Management Review, Oct2005, Vol. 30 Issue 4, p751-764, 14p; (AN 18378876)