人材育成の本質

酒井(2010)は著書の中で、企業の人材育成の要諦をいくつか示している。


教育とは、バケツに水を満たすようなものではなく、火をつけて、燃やしてやるということである。企業でいえば、働く人々の成長意欲に火がともり、学習に燃えるような状態を作り出すことが大切であろう。経営においては、どこまで個々の社員の潜在能力を引き出せるかが会社の業績を左右する。だから、勇気づけ、成長の手助けをすることで社員の潜在能力に火をつけ、勢いよく成長に仕事に燃えてもらうようにするのが大切なのである。成長の実感はそれ自体が喜びである。その喜びを得たくてさらに学ぶという好循環が起こる。よって、いったんこの成長の喜びに火がつけば、勢いよく燃え盛る可能性は大である。


人々は教えると学ばないものである。だから、「自ら学ぶようにしむける仕組みを提供するのが人材育成プログラムの本質」だと酒井は言う。また、企業はなんらかの目的があり、企業理念がある。酒井は、「企業における人材育成の目的は企業理念の浸透にこそある」とも言う。


さらに、これからの人材育成の実務は「研修のデザイン」ではなくて、「経験のデザイン」に向かうと酒井は言う。人間の学びは、その70%までもが、経験によると言われるからである。とくに経験の中でも「修羅場の経験」が重要だとよく言われる。例えば、業務上の大失敗、昇進の遅れや降格、部下の問題、職制の変更や転職、個人的なトラウマなどである。修羅場の経験には、多大な教育効果があるのである。