世界を解明することは可能か

今とは言わないが、世界もしくはこの宇宙を解明することは可能なのだろうか。それは不可能だ。なぜならば、人間は言葉(数学も含む)を用いて思考をするのであり、言葉を介してしか、世界を認識するができないからである。唯一の例外があるとすれば、すなわち言葉を用いない理解の仕方があるとすれば、それはいわゆる「悟り」による理解であろう。ただし、悟りの場合は、言葉ではないので他者に伝えることはできない。必死になって伝えようとした痕跡が、仏教などの宗教であったりその経典なのであろう。

言葉は所詮、人間の作り出した道具である。人間同士がコミュニケーションをとるための道具であり、それ自体が人間の思考・行動を規定するものである。その人間が作り出した道具をあれこれ組み合わせながら、概念を作ったり、概念間をつなげたりして、理論を作り上げ、それを脳みそが分かった気になっているというわけである。だから、世界や宇宙をまるごと人間が知ることはできないわけである。もちろん、経験科学というものが発達したおかげで、ある程度、理論として組み立てた説明を人間自身が検証することができるようになったということは、人間社会を大きく発展せしめた原因ではあるのだろう。