個人の人生の流れには偶然性はなくすべてが必然であり、宇宙の法則性によって突き動かされていると思われる。六十四卦は、宇宙の法則の則った人生の流れを指し示す地図であり、指標としての役割を果たしている。
大極的宇宙観とは・・・1つは、陰陽の相反する属性があり、そのバランスをとることで流れがつくられる。2つは、陰陽二気の動きが、天と地と人を結びつけており、それらを合一することが易の道を生きることとつながる。3つは、・・・世の中の現象はすべてこの陰陽の相剋によって働きが起こり流れが出てくる。・・・陰陽は絶えず変化しているものであるが、その中に一定の不易の法則があり、それらは矛盾するものではない。「栄枯盛衰」という言葉があるように、栄えると滅亡し、盛んになれば衰えるという変化が陰陽の流れであり、またその背後にある移ろいの中にも変わらないものが脈々と流れている(黒木 2006:22-23)。
得た卦の内容を、あらゆる角度から検討し、依頼者(クライエント)の連想に沿って検討を加えていくことになる。それは夢分析の方法論と類似しており、夢分析では「夢を解釈してはいけない」という考え方が根本にある。言い換えれば、易者が卦を自分なりに解釈してはならない。問いと出た卦をつなぎ合わせ、クライエントの連想を重視し、セラピストの大極的宇宙観をベースに分析していく。そのような方法で、クライエント自身が「腑に落ちる」ことがらを通じ、それらをつなぎ合わせることで、闇の中にある一筋の光が見えてくる(黒木 2006:24)。
コメント:つまり根本にあるのが大極的宇宙観・易の思想・宇宙の法則であり、それを前提としたうえで、目の前に現われている卦が意味するところを、クライエントと一緒になって感じていこうということか。セラピストが「宇宙の法則性」を忘れないように指し示し、クライエントはその中における自分自身の現在の位置づけや、身の回りで起こっていることの意味を洞察ことになるのだろう。セラピストがいることによって、クライエントは自分が存在する(乗っかっている、運ばれている)宇宙がもつ規則性・法則性を見失わず(忘れずに)にすむ。