易で兆しを読む方法

河村(2008)は、易は「機」の哲学だという。易の別名を「変易」ということとも関連している。万物は、一刻も休まずに生成し化成し常時変化してやまない。こうした止どまるを知らず常に変わり続ける動きを重視するのが易の基本的な姿勢だというのである。具体的には、六十四卦の各爻の変化に注目し、その微妙は変化を<機>とみるのだと河村はいう。機は、きざし、はずみ、きっかけ、しおどきであり、要するに転機であり好機である。機が熟さない限り、いかに力量が備わっていても結果は期待できないが、逆に機運に乗りさえすれば、その力量は倍加するとのことである。

 

易において、機の動きを見るのが、「変爻」である。実際に占って得た卦すなわち「本卦」の6本の各爻のうちいずれかあるいは全体が、陰が陽に、陽が陰に変化した場合に変わった卦を、「本卦」に対して「変卦」あるいは「之卦」と呼び、易はこれを重視すると河村は説明する。易が変卦を重視する理由は、表面に表れたものよりその内側が大切であると考えるからだという。つまり、華やかな目先の動きにはとらわれず、ひたすら背後に隠された微妙な動きに目を配れというわけである。これが、易が機の哲学と呼ばれるゆえんである。

 

河村によると、易にはさまざまな変卦があるが、「互卦」「錯卦」「綜卦」が、将来の含みを察知する手段として実践ではよく用いられる。互卦は、卦の下から二、三、四爻を下段の内卦とし、三、四、五爻を上段の外卦としてみるものである。錯卦は、爻の位置は変えずに、そべての陰陽を転換したものである。綜卦は、6本の爻の上下を180度逆転したものである。

 

易で本格的に占うというのは、少なくとも1つの卦が出ると、本卦に基づいて変卦を知り、またそこに含まれる互卦の暗示を加味し、錯・綜卦の関連性を併せて推察し、最後に総合的に占断を下すのだと河村は説く。つまり、易が強調するのは、ものごとの上っ面や虚飾にとらわれず、内側に潜む真実に光をあて、それを直視することなのだというのである。往々にして真実はヴェールの背後に隠されている。一見とるに足らない現象も、実際そこには無数の要因がからまっているのと同様に、1個の卦の中にも、そこには無数の意味が込められているからこそ、互卦・錯卦・綜卦などの変卦(之卦)を易では重視するのだという。 

文献

河村真光 2008「易経読本―入門と実践」光村推古書院