戦略と組織

「戦略は組織にしたがう(チャンドラー)」という有名な命題を前提としよう。ここでいう戦略とは、企業の目指すべき目標であり、自社の事業範囲(事業ドメイン)のあり方であり、自社の競争優位性の特徴とロジックである。また、多事業組織の場合は、各事業がそれぞれの事業環境で活動するための戦略の上に、それらを束ねる全社戦略がある。


組織は、戦略を実行し、目標に近づくための手段と考えることができる。ロバーツによれば、ごく簡単に組織の重要要素を整理すると「PARC」として表される。これは、People, Architechture, Routine, and Cultureの頭文字をとったものである。


ここで、戦略と組織の重要な特徴を見てみよう。戦略は、比較的早く変えることができる。例えば、再生プランの発表によって、これまでとはがらりと変わった戦略を提示することも可能である。しかし、組織は簡単には変わらない。なぜならば、組織には「慣性」というものがあり、これまで進んできた方向性をそう簡単に方向転換できないという性質と、組織そのものがさまざまな要素が複雑に絡みあっているために、それらを再構成するには時間がかかるためである。


例えるならば、大組織の舵取りは、豪華客船の舵取りであり、急に戦略(方向性)を変えようとしても変えられない。タイタニックのように、間違った方向に突き進み、かつ勢いがついてしまっていれば破局を待つのみになってしまう。そうならないように事前に適切な策をうっておくか、大組織であっても小回りが利く機敏な動きが出来るように改造しておくかの手が必要である。