ザインエレクトロニクス記事

http://www.ebjapan.com/content/monthly/2005/7/Interview/index0720.html

半導体ファブレスメーカーのザインエレクトロニクスは、グローイングニッチ市場に向けた半導体ビジネスで成功を収めている。今や、液晶パネルに画像データを高速に伝送するためのLVDS(Low Voltage Differential Signaling)方式に対応したLSIでは世界のリーダーとなった。「成功要因の30%は技術力だが、70%は顧客のニーズに応えることである」と、ザインエレクトロニクスの社長である飯塚哲哉氏は語る。

・・・「LVDS対応LSIはメーカー側の発想で事業化したのではない。顧客が満足する性能のLSIがなく困っていたので、顧客のニーズに応える形で開発した」とLSI開発の経緯を語る。・・・「追いつかれたという人もいるが、はっきり言って水をあけられた」・・・韓国Samsung社の純利益は2004年に1兆円を超えた。これに対し日本の半導体メーカーは全社の利益額を合計してもSamsung社1社に追いつかない、と一例をあげる。・・・優秀な人材がいても投資ができず、日本の半導体メーカーは竹やりで韓国や台湾の半導体メーカーと戦争を強いられた

日本の半導体産業が厳しい時期だからこそ、ベンチャー企業にとってチャンスがある。・・・日本ではベンチャー企業が生まれて成長していくシステムがまだ十分に確立されていない。日本はリスクマネーに頼れないし、技術者は大企業が安心と思いこんでいるから優秀な人材も動かない。
・・・ベンチャー企業が成功するために、技術やアイデアは重要だが、それ以上に顧客のニーズを大事にすることだ。それと借金はしないこと、と飯塚氏は強調する。・・・成功要因の30%は自社の技術力だが、残り70%は顧客のニーズである」と自らの経験を振り返る。


同社がトップシェアを確保しているLVDS対応LSI分野は、市場規模が数100億円と小さく、一人当たりの売上高を多く見込めないために、大手半導体メーカーが参入しにくい分野だ。LVDS対応LSIの場合は米TI社やNational Semiconductor社が製品化で先行しており、ザインエレクトロニクスは大手半導体メーカーと戦ってきた。しかし、先行メーカーが供給する製品の性能が顧客にとっては不十分で、顧客が困っていた。同社がそのニーズに応えるもっと使いやすいLSIを開発したことが今日の事業基盤となっている。

ザインエレクトロニクスは2004年10月に次世代カーマルチメディア用伝送技術として「V-by-One」技術を新たに提案した。2005年5月には、同技術を使ったチップセットの新製品を発表した。
・・・ザインエレクトロニクスはR&D投資を今年度も増やす予定だ。「売上高の7〜8%がR&D投資のガイドライン」としているなかで、 R&D投資額は2004年度の10億4000万円に対し、2005年度は12億4000万円の予定だ。2005年度第1四半期だけみると R&D投資は2億7400万円で、前年同期に比べ33.9%増加している。・・・従業員は79人で、そのうちエンジニアは50人いる。半導体のデザイナーだけでなく、半導体ファブレスメーカーとして信頼性、テスティング関連の技術も重視している。
・・・会社として規模の小さい中小企業ではなく、例えば弁護士事務所のような専門家の集団として、1人あたりのパフォーマンスを高めていく。そこには、同社が新たな知識と新産業を創造する原動力を生み出すための人資豊燃「人燃ゆる処」という、飯塚社長が目指す創業の理念が根底にある。