とりわけ事業部制、およびその派生系として捉えるならばカンパニー制や分社化などにおいて(機能別やマトリクスもそうかもしれないが)、戦略上の意図で組織構造が変更もしくは進化するというのは教科書の教えるところである。例えば、より顧客のニーズに的確に対応できるようにするために事業部のくくりを再編したり新たな事業部を創生したりする。また分散した資源を集中して効率化したり、競争力の源泉にするという意味で、特定の機能を統合したりする。
しかし、私の観察では、とりわけプロフェッショナルファームにおいて、組織デザインの論理は、顧客や技術という軸ではなく、仲間内の不和や、考えや思想の不一致などから、同じ仲間同士がある部門からスピンアウトするような形で別事業部となったり、分社化したりするようなケースが結構多いのではないかと思うのである。
例えば、大学というプロフェッショナルな組織において、経営学部と商学部の両方が存在するところがあるが、これは技術や機能、もしくはもっと大きな戦略という視点から合理的に導かれる組織構造であるとは考えにくい。同じ大学に、2つ以上のMBAコースがある場合もある。もちろん、その意義を、後付け的なかたちで合理的な説明をすることは可能であろう。つまり、その必然性をなんとか戦略的・経営的、その他の合理的見地から説明するのである。しかしそれだけでは納得がいくまい。いちばん納得がいくのは、そういった組織構造の分化や再編が、どのようなプロセスで起こったのかを吟味することである。分化や再編をするにあたって、本当に戦略的な議論に終始したのか、その結果として現在の組織構造に落ち着いたのであろうか。それとも、もっとドロドロとした、人間関係のもつれ、政治的な駆け引き、意見の食い違いなどが、現在の組織構造の原型を形づくるにいたったのか。そういったプロセスを研究するのも面白い。
こういった現象がプロフェッショナル組織に多いと私が思うのは、それはプロフェッショナルの特質(独立を好む、プライドがあるなど)とも関係があるのではなかろうか。