相場はホリゾンタルとバーティカルの組み合わせである

若林(2012)は、一般的に経済の動き、相場の動きはホリゾンタル(水平)とバーティカル(垂直)の組み合わせだと主張する。例えば、その1例として、テクニカル分析の用語でもある「アイランド・リバース」という言葉を紹介している。これは、相場がある日、不連続に急落し、急落した水準で長期間這うと「アイランド」ができる。限られた水準で上下動を繰り返しながらホリゾンタル(水平的)に相場が推移する。そしてある日、不連続に急騰に転じる(リバース)というのである。これは相場の底のサインであり、ホリゾンタルな推移の期間が長ければ長いほど、バーティカルな動きが大きくなるという。


ここでポイントとなるのが「日柄」「時間の経過」であると若林は指摘する。経済も相場も時間の関数であるから、時間の経過が最重要のファクターであるというわけである。低迷が続いても、時間が十分経過すればバーティカルな動きの端緒が出てくる。あとは、1つか2つのゲーム・チェンジャー(人々の集団心理に訴えかけて、将来予測を劇的に変えてしまうもの)があれば十分だという。いったん流れが変わってしまえば、あとは自己強化のプロセスがトリガーとなって、負の連鎖から逆転、正の連鎖の爆発的進行が可能になるという。


例えば為替相場について言えば、若林の主張は「為替相場は経済の変数ではなく相場」である。相場であるということは「必ず天井、底が形成される」という属性を持っているのが「常識」である。相場であるかぎり必ず上限には限度があり、下落にも限度がなければならないというのである。これは、上昇や下降する時間(日柄)に限りがあることを示しているという。つまり、一定の日柄が経過すれば、相場は反転するということである。この考えにしたがえば、2012年の1ドル=76円あたりですでに円高・ドル安という流れは終焉しており、日本経済の低迷やデフレも日柄的には終わっており、そこから脱するのも時間の問題だと若林は予測するのである。


経済や為替を「相場」として見るからには、「相場」を主語にしないといけないことを若林は指摘する。例えば「投資家が株を売ったから相場が下がった」というように、投資家を主語にするのは間違っているとする。相場はあくまで相場が主語であり「相場が下がるから投資家が株を売ったのだ」と考えるべきでだという。なぜ円安になるかといえば「円高が終わったから」と答えるのが正解である。相場は行きつくところまで行ってしまえば勝手に反転して逆方向に走るものだからである。


アイランド・リバースの属性では、ホリゾンタルな動きが長いほど、バーティカルな角度が急角度に長期間推移する。日本のデフレ脱却も時間の問題であり、日柄が走り切っているドル・円相場については適当なきっかけをつかめば円安になるはずであると若林はいう。そして円安がデフレ脱却のきっかけとなると予想する。その後、株式相場が上昇し、最後に景気全般の上昇が起こるのだと予測するのである。