仕事と出会い

職縁結婚の盛衰と未婚化の進展

  • 澤美帆(国立社会保障・人口問題研究所主任研究官)
  • 三田房美(国立社会保障・人口問題研究所主任研究官)
  • 日本労働研究雑誌 No. 535/January 2005

本稿は, 今日の初婚率の低迷に, 男女の出会い, とりわけ職場を通じた出会いの動向がど
のようにかかわっているのかに着目した。「出生動向基本調査」における夫妻の出会いの
きっかけに関するデータを用いて, 過去30 年間の初婚率の低下量を要因分解したところ,
低下分の約5 割が「見合い結婚(親せき・上役の紹介を含む)」の減少によって, 4 割近
くが「職場や仕事の関係で」の結婚(職縁結婚) の減少によって説明できることがわかっ
た。換言すれば「学校で」「友人・きょうだいを通じて」「街中や旅行で」といった, その
ほかの恋愛結婚の未婚者に対する発生確率は, この40 年間ほとんど変わっていない。
1960〜70 年代に特有な人口・経済・雇用条件のもと, かつての企業社会が果たしていた
マッチング・メーカーという役割は, その後どこにも引き継がれないまま縮小に向かって
いる。一方, 企業に勤めるほとんどの独身男女が, 従来通りの長時間勤務であり, 見合い
や職縁結婚に代わる新たな出会いの場が開拓されてきた気配はない。結婚の需要面(費用・
便益) と同様, 配偶者選択の機会が縮小するという供給面の事情も未婚化の進展にとって
は重要な要素であることを指摘するとともに, 企業・個人双方において, ワーク・ライフ・
バランスに関する抜本的な意識改革がなければ, 今日の未婚化は簡単には解消しない可能
性を示唆するものである。