確率論的ツキの法則

谷岡(1997)は、主にギャンブルにおける「ツキの正体」について、確率論的な視点から、客観的な「ツキ」の正体と、主観的な「ツキ」の正体に分けて解説している。


谷岡によれば、客観的(科学的)にツキをひとことで表現するならば「ツキとは統計上のゆらぎ(長い時間プレイすれば必ず起こる連続した勝ち負けの大波)」である。統計学者が「必然のゆらぎ」とよぶ分布がツキの正体である。つまり、ツキは、客観的に見れば、統計上、必然的に起こる事象である。統計上のゆらぎは、大数の法則や統計上の分布などの統計学からすれば、存在しないほうがおかしいのである。


それに対し、個人の主観から見れば、刹那の生活において、統計上のゆらぎの渦中に居れば、本人にとっては単なる偶然とは思えないような事象をいくつも経験したり、見聞きしたりする。つまり、客観的・統計的には必ず起こる事象に遭遇しているだけなのに、個人の主観から見れば、絶対起こりえない事象として経験される。それをもって「(単なる偶然の一致とは思えないので)ツキが存在するのだ」と信じるわけである。また、人間の記憶のあいまいさからも、ツキの流れがあったかのように過去を思い出すことによって、ツキの存在を信じることになる。