物語の有効性

様々な状況で、論理的理解よりも物語理解のほうがわかりやすく、記憶に残りやすい。物語は、人を引き込む魅力を持っている。よって、人に説明するときは、理屈で説明するよりも、物語として説明したほうがわかってもらえるし受け入れてもらえる場合も多そうだ。それはなぜだろうか。


物語的記述、物語的理解の特徴は、時間の流れと共に物事が展開するようすを語ったものであるから、物事が時間軸のうえに順番に並んでいるという点である。理論は通常、時間軸による展開ではなく、変数や概念のつながりによって説明するものであるため、変数や概念の数が増えたり関係が複雑になると、あたまが混乱するし、理解しにくく、覚えにくいのである。時間軸にそって展開するストーリーであれば、順番に展開していくさまを理解し、覚えればよいし、古代から神話や童話があるように、基本的なストーリーのプロトタイプや筋が存在するので、それに照らし合わせるかたちで理解し、記憶することも可能である。つまり、時間とともに物事が展開する流れとして理解することが可能なのである。


人間の脳は、細かいことは忘れても、時間的な順序はあまり忘れないようにできているらしい。だから、時間とともに移り変わるストーリーを覚えやすいのだ。これは、長期記憶が物語的記憶ともよばれるように、人間の脳の仕組みが、物語的な出来事の展開を記憶しやすいようにできているのだと考えるのが自然だろう。人間の脳は、理論的に物事を理解するずっと前に出来上がったものである。記憶媒体が発達していない古代から、人々は物事を紙などの媒体をつかわずに記憶し伝承していくための手段として物語を使ってきたのである。つまり、物語による理解が、理論よりもずっと昔から用いられてきているのである。