幸田露伴の努力論より2

春夏秋冬の移り変わり、昼夜の循環、月の満ち欠け、雨、風、雪、霜、地震、洪水、旱魃、噴火などは、すべて天の支配するところであり、天の法則は、人間の力など及ぶものではない。人間はこの中で生まれ、育ち、壮年となり、老いて死を迎える。

生き物はすべて、まぎれもなく宇宙の気の昇降・屈伸・旋回・交錯などによって育てられコントロールされている。大自然の法則の中では、おおよそ、朝から昼にかけて気が張り、夕暮れに向って気は弛んでいく。自然に順応して、自然と自己が調和するのがいい。


風に逆らって船を漕ぐことはできるが、風に従って船を漕いだほうが効率がよい。自然に逆らって自分の気だけ張るのは、たとえてみれば北風の中を北に向かって船を漕ぐようなものといえる。自然の気の運行と、自分の内の気の運行を相応じさせるならば「二重の張る気」ということになる。

参考文献

渡部昇一「運が味方につく人つかない人」三笠書房