合併・統合の光と影

https://www.rieti.go.jp/users/economics-review/006.html

企業が合併・統合を行う場合、大きく分けて、垂直的統合(中間財等を生産する川上企業が最終財を生産する企業の合併、もしくは、買い手・売り手関係の統合)と水平的統合(生産物における投入・産出関係はなく、水平的に結合したもの)の2つに分けることができる。なぜ、企業が統合するかという問題を市場と企業の対比、企業の境界の問題を捉えたのは、いうまでもなくCoase(1937)、Williamson(1975)であり、理論化した Grossman and Hart(1986)の業績である。彼らの議論によれば、企業の本質は取引を内部化することによる取引費用の削減であり、売り手が取引関係に特殊な投資を行っても買い手に搾取されるような状況(ホールド・アップ問題)があるならば、両者は統合して1つの企業組織になることが望ましくなる。しかし、上記のコース・ウィリアムソン・ハート流の企業境界の議論は、上記2つの統合タイプのうち、主に垂直統合に関するものである。企業の境界に関する優れたサーベイである、Holmstrom and Roberts (1998)も「企業の理論、特に、企業の境界に関する業績はあまりにも、ホールド・アップ問題や資産特殊性の役割に焦点を当て過ぎてきたきらいがある」と指摘している。