産業財マーケティング

組織購買行動アプローチ

産業財の購買行動とは、独自の公式的、非公式的な権限構造の中で関連付けられた複数の個人が、各自のもつ役割のもとに多段階的な一連の購買プロセスに関与する共同意思決定であり、その形態は買い手の直面している購買状況によって変容するということができる(Ozanne and Churchill, 1971:Webster and Wind, 1972;Sheth, 1973)。したがって、このアプローチのもとでの産業財マーケティングの本質は、買い手がいかなる購買プロセスを進み、またその段階ごとにいかなる役割をもった個人がどのように関与するのかといった点を、購買状況を鑑みながら把握することで、いかなる情報がどのタイミングにおいて必要となるのかといった点や、意思決定に影響力のあるキー・パーソンは誰かといったことを類推し、それに対応したマーケティング活動を決定することであると考えられている。

相互作用アプローチ

これは、組織論および組織間関係論において検討されている諸概念の借用と、同プロジェクトにおいて行われた産業財取引に関する国際的な調査の結果から導き出されたものであり、産業財市場における買い手と売り手の長期、継続的な関係に分析焦点をおいたアプローチである。


つまり、買い手と売り手の双方の行動は互いに規定しあっており、その結果として発生する相互作用が産業財マーケティングにおける最も重要な現象であるとされているのである。したがって、このアプローチにおいては、売り手が買い手の行動に影響を与えようとする積極的主体として認識されているのと同時に、買い手も売り手の行動に影響を与えることで問題解決を図ろうとする積極的主体として認識されている。また、価値が創造される空間も、売り手の中にのみ存在しているのではなく、売り手と買い手の多方が参加する相互問題解決過程の中に存在していると考えられている。


産業財マーケティングは、直線的なプロセスとしてではなく、相互作用的なプロセスとして概念化されなければならない。また、買い手は、自らがその顧客に対して何らかの価値を提供するために産業財を購入する。したがって、買い手がつくる価値物の優位性は、その購買する産業財によって部分的に規定される。このような需要状況において、売り手だけでなく買い手も積極的に問題解決行動をとると考えるほうが適切であろう。


産業財の買い手と売り手は少数であり、またそこでの取引量も大きいと考えられている。一般に、このような買い手の少数性や取引量の多さは、買い手と売り手の間の関係を次第に相互寡占的なものとする。・・・産業財は修理やメンテナンス、据付けなどといった、購買後サービスも含む複合体として認識されるので、そこでの買い手と売り手の関係は、買い手の購買以降も継続する長期的なものになると思われる。