SEM・共分散構造分析とフィット指標

SEM(Structural Equation Modeling)の直感的理解

測定モデルと一連の回帰分析(パス解析)を同じモデルに含め、同時に分析するもの。

  • 回帰分析やパス解析は、測定誤差を考慮に入れていない(つまり、モデル上、測定誤差がないという前提になっている)。しかし、その前提が大きく妥当性に欠けたものでないかを確認するために、回帰分析やパス解析の前に、測定モデルを評価する。例えば、因子分析や信頼性分析。測定モデルの評価で、妥当であるという判断がなされて初めて、回帰分析やパス解析を行う。
  • しかし、上記の手順で行っても、回帰分析やパス解析で用いられる測定変数に誤差が含まれているはずであり、それがモデル全体の妥当性を弱める。
  • その点、SEMは、測定モデルと(潜在変数を含む)パスモデルを同時に扱うので、モデル全体の適合度を見るときは、測定誤差の問題と、それ以外のモデルの評価の両方を同時に行うことができる。

SEM・共分散構造分析のフィット指標

カイ二乗(乖離度)

  • データと完全に適合している状態は0、適合が悪いと無限大に大きくなる。カイ二乗と自由度を用いて算出した有意確率が、P > .05であれば、データと適合しているとみなす。ただし、結論がデータ数に影響されやすい。データ数が多くなると、有意(p < .05)になりやすい。

GFI/AGFI: Goodness of fit index, Adjusted goodness of fit index

  • 回帰分析におけるR2(決定係数)のように解釈できるもの。GFIは0〜1の値をとり、0.9以上が望ましい。AGFIは、回帰分析における調整済みR2のように解釈できるもので、GFIの欠点を修正し、パラメータが多く複雑なモデルにペナルティを加える。AGFI < GFIだが、モデルが複雑でない場合は、GFIとAGFIは近い値となる。

RMR

  • 観測データの分散共分散行列と、モデルから算出される分散共分散行列の差を表す。完璧に一致していれば残差は0であるため、0に近いほど適合度が高いと判断する。

RMSEA(root mean square error of approximation)

  • モデルの分布と真の分布との乖離をモデルの複雑性を考慮に入れて示した指標。0.05以下であれば当てはまりがよく、0.1以上であれば当てはまりが悪い

NFI(Bentler-Bonett normed fit index)

  • 基準化適合度指標。独立モデル(当てはまりの悪いモデル)との乖離度を表す。1に近いほど適合度が高いと判断する。ケース数が少ないと当てはまりがよくても1に近似しないという欠点がある。

IFI(Bollen's incremental fit index)

  • 独立モデルを基準とした比較指標。1になるほど適合度が高い。

TLI(Tucker-Levis index), NNFI(Bentler-Bonett non-normed fit index)

  • 1に近づくほど適合度が高い

CFI(comparative fit index)

  • NFI(ケース数に影響される)とTLI(0-1の範囲を逸脱する場合がある)の欠点を修正した指標。1に近づくほど適合度が高い。