コモン・メソッド問題

コモンメソッドバイアス(共通方法バイアス)

観測される分散が、測定された概念の真の分散ではなく、測定された手段に起因するもの。特定の測定方法に対して、特定の反応を示すことを前提にしている。例えば、概念AとBに相関があるという仮説を、同じサーベイで測定したAとBを分析して検証した場合、実際に高い相関が観測されたとしても、それは、概念Aと概念Bとの間に真の相関があるからなのか、それとも、AとBが同じ方法で測定されているから相関があるのか定かではない。よって、仮説が支持されたと結論づけることに疑念が出てくる。

同じ回答者から変数を収集することに起因するコモンメソッドバイアス

一貫性を維持しようとする動機

複数の変数を同じ回答者から取ると、その回答者が一貫性を維持したいという動機から、真の相関よりも高い相関(もしくは低い相関)が観測される。

幻(思い込み)の相関

回答者が、測定される変数間に何らかの仮定や推論をしてしまい、それが回答に表れる。

社会的望ましさ

回答者が、真の反応ではなく、社会的に望ましいように回答してしまう。

寛大化傾向

回答するときに、どの変数も全般的に甘くつけてしまう。

黙認・同意

概念そのものではなく、言い回し(肯定的、否定的)などに回答が影響される。

ムード

直近のムード(明るい、沈んでいる)などが回答のパターンに反映される。

測定尺度の特徴に基づくコモンメソッドバイアス

社会的望ましさを含む尺度

尺度に社会的望ましさの要素が含まれている。

デマンド特徴

回答者が調査目的などを類推したり解釈したりして回答する。

尺度の曖昧性

尺度が曖昧であるため、回答者が自分で解釈したり類推して回答する。

共通する尺度形式

尺度の形式やスタイルが同じであるために、同じように回答してしまう。

肯定的・否定的な言い回し

尺度の言い回しが肯定的だと高く、否定的だと低く、回答者が回答する。

測定尺度の並びや関係性などの文脈から勝手に解釈されて回答されることによるコモンメソッドバイアス

ライミング効果

先に答えた回答が、それよりも後に答える質問への反応に影響をあたえる。

尺度の埋め込まれ

中立な尺度が、肯定的もしくは否定的な言い回しの別の尺度と同時に用いられると、価値観が反映された回答になってしまう。

尺度がもたらすムード

最初のほうの質問が回答者のムードに影響をあたえ、それがその後の回答に反映される。

尺度の長さ(量)

尺度のアイテム数が短いほうが好まれるが、短いために、回答者が前の回答を記憶しており、それが後の回答に影響を与える。

異なる尺度のミックス

異なる概念を測定するアイテムを混ぜて回答させることが、アイテム間の観測される相関を低めるかわりに、測定尺度(概念)間の観測される相関を高める。

測定が行なわれた文脈に起因するコモンメソッドバイアス

測定の場所

同じ場所で、異なる概念を測定すると、その概念間の観測上の相関が高まる。

測定のタイミング

同じタイミングで異なる概念を測定すると、その概念間の観測上の相関が高まる。

共通する媒体での測定

異なる概念を共通する媒体で測定すると、その概念間の観測上の相関が高まる。

文献

Podsakoff, P. M., MacKenzie, S. B., & Podsakoff, N. P., 2003. Common Method Biases in Behavioral Research: A Critical Review of the Literature and Recommended Remedies, Journal of Applied Psychology, 88(5):879-903.