未来に向けた物語

物語は未来に向けられている。われわれは決して未来や運命を見通すことはできない。未来は本質的に非決定論的であり、予測などできないのである。・・・つまり、世の中の多くの時間は過去の延長で占められているからだが、問題は変化が起きる瞬間(変曲点)である。これは見逃してしまうことが多いのである。この変曲点の時期と質が本来価値ある情報である(野中・紺野 2007:218-219)。

このアートは、企業やビジネスの可能性において「未来は開かれている」と信ずる、われわれ自身のマインドのありかたを基本とする。つまり、それは、「いまここ」での実践の一歩一歩が、事業や企業に新たな局面をもたらし、過去の内部資源や現状のコンピタンスの制約を超えるような成果を生み出しうる、という可能主義的信条なのである.

・・・未来への志向性を持つことは、主観的に存在するということである。われわれは未来の創造者であると同時に実践者である。この逆の姿は、過去の「客観的」データ分析に基づく「現実的」な計画者や解釈者だが、それは傍観者的意識にもつながりやすい(野中・紺野 2007:220-221)。

文献

野中郁次郎・紺野登(2007)「美徳の経営」NTT出版