流れの設計としての戦略

伊丹(2003)は、戦略の設計が、長い時間軸上での「流れの設計」になる例を紹介している。順序の設計といってもよい。戦略的な資源の蓄積とその利用の関係に、ダイナミックな流れがあり、順序があるというわけだ。今の時点での製品・市場戦略だけを決めるのが戦略設計ではなく、企業発展の流れ、事業活動の流れを設計するのが戦略である。その意味で「経営戦略とは流れの設計である(p315)」。流れのダイナミックな均衡と発展を全体として達成するための戦略のステップ、段階の設計なのである。戦略のダイナミックな流れの設計全体を考えると、戦略と資源の間の「静的な裏づけ」をあまり金科玉条としないほうがよいことも多いのである(p316)。


組織の勢いをつくりだし、利用し、維持していくこともまた、戦略のめざすべきものである(p330)。組織に勢いがないときは、どんなに環境分析、資源分析からみて適切な戦略行動でも成功しないことが多い。逆に勢いに乗っているときには、短期的に環境適合や資源適合を犠牲にした行動をとっても、結局は成功する(p344)。企業行動の発展と変化の時間的推移の計画としての、戦略の流れの設計のさいには、組織の勢いをどこでどうつくり、その盛り上がりのタイミングを利用して重要な戦略的行動をどこへ組み込むか、を十分に考える必要がある(p345)。組織の勢いは放っておけばなえてしまう。何もせずに勢いが出てくるわけでもない。また、勢いをつくるタイミング、使うタイミングも大切である。それは、波乗りに似ている部分がある。一瞬の遅れで、勢いにはもう乗れなくなるのである(p345)。

文献

伊丹敬之「経営戦略の論理」日本経済新聞社2003年