ザインエレクトロニクス

我々は日本崩壊に立ち会っている ベンチャーの身軽さで変革に挑む ザインエレクトロニクス社長 飯塚 哲哉さん

http://www.be.asahi.com/20020810/W11/0038.html

パソコンや携帯電話の液晶パネルに画像を映し出すLSI(大規模集積回路)では世界シェアの8割を占める。IT不況さなかの昨年に過去最高を記録した売上高は、今期はさらに倍増の130億円を見込む。4年間で36倍の急成長だ。


東大大学院(電子工学)の博士課程を修了して東芝へ。41歳で半導体技術研究所の開発部長。役員候補と目されながら、3年後に会社を飛び出した。めざしたのは、自分を含めた日本の技術者の「解放」だ。


当時はバブルの時代でしたから。91年に、マンションを担保に銀行から資本金3千万円を借りて、半導体設計事務所を始めました。
・・・初めて名刺交換する人は「何、これ?」って。いまもそれは変わらない。会合で話す順序も、決まって大企業の役員や大学の先生から。――大企業優位の秩序ですね。・・・日本では起業家への評価が極めて低い。ブランド志向の国ですからね。
・・・「絶対に中小企業の経営者にはなるまい」って思っていたんですけどね。

大手の受託開発の下請けを経て、97年に工場を持たずに自社ブランドで設計開発する「ファブレスメーカー」として再出発。昨年、ジャスダック市場への上場も果たした。技術者は一本釣りで集める。


最近は「金で来た人は金で去る。僕は君に金をオファーしない」と明確に言う。企業で一番大事なのは文化です。経済的な補償を軽んじるわけじゃないけど、まず仕事が面白くないと。技術、テーマ、働き方、それぞれね。自分で企画開発をして自ら売り込む。クレームもビシビシ受ける。要するに、全体が見える。臨場感を味わえる。


開発から生産まで一貫して行う垂直統合型の企業が苦しむ構図が、世界中でできあがった。コンピューターなら、OS1位のマイクロソフトとMPU(超小型演算処理装置)1位のインテルという、それぞれの市場の覇者が横に組む。半導体が水平分業になったのは85年ごろですが、日本では世界の潮流から遅れたことにかなりの人が気づいてない。日本で勝つのは簡単です。でも沈んでいく泥船の中で勝っても仕方ない。


大企業にはなりたくない。独立したベンチャー同士が緩やかに連携するカンパニーグループみたいなものをめざしたい。エンジェル(個人投資家)になるのも譲れない夢ですね。