組織の経済学のメルマガ5

モティベーション:契約、情報とインセンティブ
http://www.asahi-net.or.jp/~GA2A-MYZK/mare/mare033.html

取引を行ったり契約を交わす前に「情報の非対称」が発生していると、どちらか一方は相手より不利な状態で取り引きしたり契約を交わしたりせざるを得ない。だからそこで情報のない側の人間には、相手の持つ情報が本当かどうかを見極めるインセンティブが生じる。私的情報をどう探りどう評価すればよいのだろう?「シグナリング」と「スクリーニング」がその戦略である。...シグナリングとスクリーニングとの違いをまず書いておくと、こういう感じになる。

  • シグナリング   :情報を持つ者が先に行動する。
  • スクリーニング  :情報を持たない者が先に行動する。


組織内のモラル・ハザード
http://www.asahi-net.or.jp/~GA2A-MYZK/mare/mare036.html

モラルハザード問題が発生するには三つの条件が必要である。

  1. 取引を行う双方に、利害の対立があること。(つまり一方の犠牲の上に他方の利益が生じるということ)
  2. 利害が異なる人間双方を、取引に至らせる理由があること。(つまりとにかく取引をせねばならない状況に陥っていること)
  3. 実際に契約が遵守すなわち守られているかを調べたり、あるいは遵守を強制させることが技術的・経済的に難しいこと。


企業などの組織の従業員の給与は年齢と相関関係があるという「謎」がある。これはベテラン従業員の生産性を考慮に入れてもまだ、年齢の若い者は給料が安すぎ、年齢の高い者の給料は高すぎるという現象で、以前は「逆選択」と「スクリーニング」であると説明した。つまり「年少の者に薄給を与え、年長の者に高給を与える」という給与体系は、企業側から見れば長期的に永続して企業に勤めてくれる従業員を雇用するためのスクリーニング(選抜)であり、またそういうタイプの労働者から「逆選択」を受けることを利用した結果なのだという説明である。


だがエドワード・ラジアーによるとこの仕組みは、従業員の怠慢を防ぐ手だてとしての「保証金」であるという。怠慢行為を発見したときに、企業が従業員を解雇するとすると、企業は従業員の怠慢によって失った便益を取り戻すことができなくなる。だから失う便益を充分上回る「保証金」を従業員に課すことができ、怠慢行為が発見された従業員を解雇する時にそれを没収できれば従業員のモラルハザード対策にもなるし、企業は従業員の怠慢行為によって損をしない。若年者の給料が安いのは、そういう保証金がさっ引かれているせいなのだ、、、というわけである。


定年制というのはある意味、効率性を維持するための制度であるから、効率性を求められない組織(たとえば宗教団体や公益団体・政党や公務員)ではなかなか採用されない。定年制を採用しているかどうかは、その組織が合理的(経済的)な組織か政治的な組織かを見分ける1つの目安かも知れない。