AMJ論文に学ぶトップジャーナル掲載のための研究方法と論文執筆スキル(演習7)

前回まで、トップジャーナル掲載のための研究方法と論文執筆スキルの演習と題して本編で学んだ内容の定着を図るための演習問題を解説してきた。今回は、演習第2弾として、企業内のメカニズムというややマクロな視点からのAMJ論文を用いて、これまで学習した内容のさらなる定着を図る。

 

次の論文(以下、Dwivedi & Paolella, 2023)を読み、以下の問いに答えなさい。

 

Dwivedi, P., & Paolella, L. (2023). Tick Off the Gender Diversity Box: Examining the Cross-level Effects of Women’s Representation in Senior Management. Academy of Management Journal, (ja), amj-2021.

 

論文入手のヒント

前回の演習問題でも説明したととり、google scholarで論文を検索してみると、研究成果のオープン化の一環として、AMJにアクセプトされたバージョンが無料で閲覧できる状態になっていることが多いので、正式なジャーナルへのアクセス権を有していない場合には試してみるとよい。

設問

以下の通り、今回の設問内容は前回の演習問題とほぼ同じである。この設問内容は、トップジャーナルに向けて論文を執筆する際のチェックリストとしても使えるので控えておくと良い。

 

1)Dwivedi & Paolella (2023)の論文を読む前と論文を読んだ後で、研究対象となっているテーマについて考え方がどう変わるか。

  • 具体的には、男性が大多数を占める企業における女性リーダーの登用や増加がなかなか進まない理由、そしてその現状を打開する方法について、考え方が変わるか。変わるとすればどう変わるか

2)Dwivedi & Paolella (2023)は、先行研究をどのように批判しているか

  • 先行研究の批判は、研究動機として捉えることも可能である。つまり、研究対象となるテーマについて、先行研究では答えが見つからないから、研究をするということでもある。

3)Dwivedi & Paolella (2023)の研究の核心となる問いは何か

  • 1つの研究は、問いに駆動され、問いに対する暫定的な答えを出すことで一旦終了する。1つの研究で問いに完璧に答えられるわけではないから、残された課題を将来研究に繋げる。

4)Dwivedi & Paolella (2023)はどのような広範な理論を用いて、文脈特殊的な理論と仮説を構築したか

  • 広範な理論はいろんな場面に適応可能な汎用性を持っているが、その分、解像度が低い。個別の研究の目的は、特定の研究テーマについての理解が深まるような解像度の高い理論を構築することである。それゆえ、文脈特殊的で汎用性はやや低いものとなる。

5)Dwivedi & Paolella (2023)の研究が提示する理論と仮説のどこが新しいか

  • これは最初の問いと関連している。新しい理論、仮説は、それまでの研究対象の理解の仕方を変えるものである。

6)Dwivedi & Paolella (2023)が行った実証調査の強み、工夫はどこにあるか

  • トップジャーナル掲載論文であるからには、提示する理論や仮説が妥当であることをしっかりとしたエビデンスでサポートすることが必要である。

7)Dwivedi & Paolella (2023)が行った研究の結果、新たな発見はどのように実践に役立つか、実践的示唆は何か

  • トップジャーナル掲載論文であるからには、理論的な貢献だけではなく、新しく得られた理解が、新しい実践のあり方に繋がり、それが好ましい結果をもたらすことが示唆されるものである必要がある。

補足質問

1)Dwivedi & Paolella (2023)のタイトル・abstractに工夫はあるか

2)Dwivedi & Paolella (2023)の序論の構造はどうなっているか

3)Dwivedi & Paolella (2023)の実証調査におけるデータの開示状況はどうなっているか

4)Dwivedi & Paolella (2023)の論文では、どのように図表を配置しているか

5)Dwivedi & Paolella (2023)の考察部分の構造はどうなっているか