黄(2004) は、易占いに用いられる周易というものが、三千年ほど前に中国でどのようにしてできあがってきたのかについて、以下のように説明している。
まず、その時代に生まれた中国の人々の意識に強烈な印象を与えたものは、「天」と「地」であったはずである。つまり、高く青く澄み切っている大空、自分が足で踏みしめている大地は、あらゆる人間にとって、人間を生み育ててくれる2つの大きな力を思われたというわけである。
次に、彼らが自分たちの周囲を見回したとき、まず目に映ったのは「山」だっただろう。その高さに希望を感じ、その険しさに困難を感じたことは疑いがないと黄はいう。そして、高い空には雲も浮かび、日も照り、「風」も吹き、「雷」もとどろく。澄み切った空も、ときには暗黒と化して、激しい雨を降らせる。その「水」が川に入り、「沢」の流れとなり、ときには湖沼として集結し、いずれは海に流れ込む。風が激しく吹きすさべば、木々の摩擦によって山火事も起こる。ときには落雷によって森林が「火」で燃え上がることもある。
つまり、黄によれば、原始人にとって、このような自然の働きが宇宙の神秘であり、自然の法則だと思われたことは疑う余地がないということである。よって、「天・沢・火・雷・風・水・山・地」という8つの要素が、自然と人生を支配するものだと、古代の中国人が考えたのも当然の感情だというわけである。この8つの要素に、しばらくしてから「乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤」という文字があてられるようになった。つぎに、それぞれの8つの要素に形が象徴として与えられた。それには、陽と陰が記号として使われ、「☰・☱・☲・☳・☴・☵・☶・☷」のように形が決められた。
上記のように8つに分けられた自然を小成八卦というが、人生はもっと複雑であるため、8つの要素の2つを上下に組み合わせて六十四の卦がつくられ、それぞれに名前がつけられたと黄は説明する。