物語という世界

典型的な物語の世界では、語り手が物語る以前には何もなく、まったく無限定です。語られなければ、世界は存在せず、ただ語られることによってのみ、世界は生成します。物語の世界は、語りによって生成し、変化をしていく世界です。したがって語り手が、世界をその主述両面から整合的に(自己言及的に)表現しながら、その語りによって新しく生まれるさまざまな変化を絶えず物語の筋の中に位置づけていかなければなりません。そのためには、他方では、新しく出現してくる変化を次々と包摂できるように、筋そのものを新しく展開していく必要があります。物語では、物語ること、すなわち駆動することです。
諸変化の筋の中での位置づけ、それが物語的な因果関係であり、そこには、歴史的な時間が出現するのです。