流れの戦略論

企業を大きな木にたとえれば、これまでの日本の企業は、恵まれた環境のなかですくすくと伸びてきた大木のようなものである。・・・GNPが高い比率で成長を続けるような高度成長の時代には、個別企業においても「自然な勢い」や「流れ」を重視することが肝要であって、意識的なドメインの定義とその組み替えはほとんど問題にならないのである。


しかし、経営環境は大きく変わっている。・・・現代は、成長の方向性についての主体的な展望をもって、意識的・選択的に事業(製品)構成の定義と組み替えをすることが不可欠な時代である。そのようにして、「勢い」や「流れ」を経営の努力によってつくり出していかねばならない時代である、といいかえてもよい(榊原 1992:14-15)。

日本の経営者は「自然な流れを重視する」とか「流れにまかせる」とか、そういった種類の発言をすることが多いのである。
・・・興味をよぶ点は、このような多角化を同社の経営幹部は「地味な流れ」を進んできた結果であり、「自然な流れ」に沿ったものである、と共通に表現していることである(榊原 1992:83)

引用文献

榊原清則(1992)「企業ドメインの戦略論」中公新書