幸福

幸福とはお金や名誉や地位、肩書などにあるのではなく、それぞれの人が持っている生まれた人間的能力を百パーセント−−例え百パーセントは無理にしても、限りなくそれに近づける努力をして−−発揮すること、発揮し「続ける」こと、その過程にあるということを、中村久子という人の生きざまは、私たちに教えているといえるのではないだろうか。
(江口 2005:27)

中村久子女史

http://www.nakamura-hisako.co.jp/

両手両足の切断という重い障害を抱えながらも、人生をたくましく生き抜いた1人の女性 中村久子。度重なる逆境の中でも、ひとときも人間としての誇りを失わなかった。久子の生涯は、現代人の荒廃した心に強烈なメッセージを投げかける。

両手両足ともに無くて二人の子を育て、炊事、洗濯、縫い物等、一家の主婦として家事一切をやってのける、と聞いただけでは誰しも信用する者はあるまい。中村久子女史の妙技(?)実演を現実に見せられ、一同ただあれよあれよとばかり感嘆の声を呑んだのであった。動作のきくところとしては手首の無い腕と口だけである。先ずその腕に口で包帯を結び、その包帯が五指以上の働きをする。小さい鋏を口にくわえて切り紙細工の細かい仕事がスラスラと運ばれる。