Week3: 質問票データの分析
講義中に行った質問票データを使って、テキストの79〜80ページの内容が妥当かどうかについて検証してみます。
質問票のQ6は、総合的な職務満足度を図るための1項目の指標です。一方、質問票Q11からQ15は、職務満足度を、特定の側面から眺めたもので、仕事内容、給料、昇進機会、上司、同僚に対する満足度を測定しています。教科書に書かれているのは、総合的な職務満足度を知りたい場合、直感的には、特定の側面から見た満足度を足し合わせたもの(Q11-Q15の合計点)のほうが望ましいと思うのだが、実は、1項目の職務満足度(Q6)のほうが望ましいというポイントです。
そこで実際にみなさんから集めたデータをつかって、1項目の総合満足度と、5項目を足し合わせた総合満足度の相関を取ってみると、相関係数は、0.44でした。これは中程度の相関で、同じ変数を測定しているのであれば、相関係数は1に近いはずですから、その理想から見ると低い値だといえます。これは何を意味しているのでしょう。相関が中程度しかないということは、どちらも総合満足度という同じ概念を測定しているのではなくて、それぞれ測定しているものが違うということを意味しています。
ではどう違うのでしょうか。テキストにもあるように、5項目を足し合わせて総合満足度を計算した場合には、本当の総合満足度には含まれているのだが、5項目では測定できていない成分が抜け落ちてしまっている可能性があるということです。ですから、仕事内容、給料、昇進機会、上司、同僚に対する満足度を足し合わせたのが総合的な満足度だというわけではなく、「総合的にいまの仕事に満足している」というのはもっと広い意味での満足感であるということでしょう。だから、従業員が感じている総合的な満足度を知りたい場合には、1項目で直接的に尋ねるほうが総合満足度を把握するうえでは望ましいということになります。ただし、特定の側面から見た満足度を測定する場合は、どの部分の満足度に問題があるのか、賃金か、仕事内容か、上司か...?といったように、問題の分析をするには使いやすい方法であるといえましょう。