無意識を流れに乗せる

トランスパーソナル心理学などでは、宇宙には自分を超越した大きな力があり、それに耳を傾け、感じ取り、うまく身を任せる(流れと一体化する)ことの重要性を仮定する。自分を運んでいる大きな流れにうまく乗る(一体化する)ためには、無意識を活用することが効果的だ。鎌田(2005)の以下の説明もそれと整合する。

人生で行う決定の大部分は、実は無意識が支配していると言っても過言ではない。・・・無意識を知ると上手に生きることができる。・・・無意識の指し示す方向に向かって、難所を避けながら人生航路の舵を取れるようになるのである。・・・無意識は厳然として意識の下に存在し、大きな力を及ぼすことだけ知っておいていただきたい(鎌田 2005:146)。


これを使いこなすには、かなり工夫がいる。・・・皮肉なことに無意識を使おうとしてジタバタと動き回る人には、無意識はうまく働いてくれない。・・・逆に無意識の重要性を信じて、無意識が動き出してくれるまで待てる人は、無意識を使いこなすことができる。ゆったりとした気持ちで受け身になって、無意識に身をゆだねる状態だ。スキーを例にとって説明してみよう。・・・谷方向に向かって滑っていくのは気持ちがよい。この自然に落ちていく先が、人生の望む方向を指し示しているのだ。余計な力を一切必要とせず、心地よく本来の自分の望む方向へ進んでいく感じである(鎌田 2005:147-149)。


・・・この時、もっとも大事なことは、受け身になるということだ。意識を意識的にはずして、無意識に前面に出てもらう。・・・意識を抜くことさえできれば、無意識はひとりでに上昇してくれる。

スキーのメタファーは、無意識をそれがもつ重力(自然に進んでいく方向)に任せることで宇宙の流れに乗せることにより、自分自身もその流れにうまく運ばれる様子(身体の力が抜けた自然体でスキー板に乗って滑べっていく様子)を表現していると思われる。