順風満帆

風には本来、それ自体によいも悪いもない。また、よい船が順風を、悪い船が逆風を受けるということもない。そう考えると、その風が順風になるのか、逆風になるのか、そういう運・不運はまったくのめぐり合わせであるように思えてくる。だが、たしかに風の向きは予測しがたいものではあるが、予測がまったく不可能なわけではない。船を出そうとするとき、充分に調査し、順風を受ける見込みを得た後に船出をしたなら、10のうち7、8はそうなるだろうし、逆風を避けることもできるであろう。つまり、どんな風に遭うかというのは、偶然のめぐり合わせだけではない。

幸福に遭う人の多くは「惜福」の工夫のある人であって、非運の人のほとんどは、その工夫のない人である。「惜福」とは、文字通り福を惜しむことで、自分に訪れた幸福のすべてを享受してしまわず、後に残していくという意味である。